失敗しない予算計画を作るために

年末に差し掛かると企業によっては、予算策定を始める会社も多いだろう。

ただ、

「予算を作ったはいいけど作りっぱなしになっている
「予算と実績の乖離が激しすぎて作る意味がない」

などの悩みを持つ方も多いのではないだろうか?

これは、根拠になる数値を持たずに予算を策定するから、だ。

ちゃんと意味のある予算を作るには、まずは自社の利益構造=押しボタン、をつかむことが大切である。

そのためには、何をすべきか? やるべきことは過去の決算書等の数字の分析だ。

今回は、具体的に決算書を分析して、利益構造をつかむ方法を紹介したい。

1.まずは準備から始めよう

(1)決算書の転記

まずは、決算書を過去2年分用意し、以下のリバース財務ツリー(以下、ツリー)に転記する。

転記にあたり、費用を固定費と変動費に分解し、限界利益を記載する。定義は以下の通りだ。

・固定費:売上に直接連動せず、経営者の意思決定によるもの/契約により自動で発生するもの(例:人件費、家賃、広告宣伝費)
・変動費:売上に直接連動し、売上が上がると意思決定にかかわらず自然に増加するもの
(例:仕入費、外注費)
・限界利益:売上から変動費を引いたもの
・限界利益率:売上に占める限界利益の割合

これで営業利益の増加要因が見えるようになる。

(2)KPIの設定

売上を適切な形に分解する。売上は一般的には客数×客単価、で分解できる。客数は、新規顧客と既存顧客で分解できる。

ただし、ビジネスモデルによっては、別の分け方をする方がよい場合もあるだろう。例えば、

客数×客単価は同じだが、

客数
 ┗・成約率×提案数 
        ┗・提案率×アポイント数
                ┗・アポ成功率×総アプローチ数

という分け方をする方がいいかもしれない。

サブスク型であれば、

・プレミアムプラン売上
         ┗・客単価×客数
               ┗・新規契約数+既存契約数ー解約数
・ベーシックプラン売上
         ┗・客単価×客数
               ┗・新規契約数+既存契約数ー解約数

などの分け方もあるだろう。大切なのは、自社のビジネスモデルに合った売上の分解方法を考え、その数値を追うことが大切だ。

「自社に合った分解方法を試してみたが、必要な数字が取れない」ケースもあるかもしれない。
その場合は、手間をかけてでも数値を集めることから始めるべきだ。現場からすると余計な手間が増えた、と抵抗されるかもしれないが、経営実態を把握するための必須のことなので、丁寧な説明の上で、数字を集める仕組みを作ることが重要である。

2.実際に分析してみよう

数字がそろったら分析だ。営業利益から逆算していって、何が良化要因となっているのか?悪化要因となっているのか?一つずつ分解して探っていく。

上記の表で見てみよう。営業利益が+0.5億だが、限界利益+2.0億で固定費の▲1.5億をまかなっている。

固定費は人件費が▲2.0億と費用が増加している。人員を増やしたのが原因の可能性が高いが、この人件費が適正かどうか、は判断が必要だ。なぜなら、来年も固定費である人件費はかかり続けるため、同じ以上の限界利益を保たなければ利益は悪化するからだ。

次に限界利益を見ると、売上も増加しているが、限界利益率が+5%となっているのが大きい。ここは利益を大きく生むところなので、詳細の分析が必要となる。

売上を分解してみると、新規は変わらず、既存だけが増加している。既存を見ると客数は減少し、客単価は増加している。例えば、値上げ交渉がうまくいった、という原因が考えられるかもしれない。逆に客数は減少しているので、値上げの結果で顧客が離れたのかもしれない。

ここまでは数字でわかることだが、ここからは経営として判断しなければならない

・新規顧客が増えていないが、問題はないのか?このままではジリ貧になるので対策が必要では?
・既存顧客の値上げは本当に妥当なのか?離れた顧客に対して何らかのアプローチで復活はできないのか?
・上記を踏まえたうえで人件費は妥当か?更に増やす余地はあるのか、現状でもいっぱいいっぱいなのか?人員が増えている割に客数が減っていることに問題はないのか?

このように、課題が見えてくる。これを踏まえたうえで予算を策定すると、妥当な予算を組むことができる。

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