社員の成長を止める“ダメな評価制度”に要注意! 正しい評価制度の作り方とは?

「評価制度を作ったのに、社員のモチベーションが上がらない……」
「ちゃんと評価しているつもりなのに、優秀な社員が辞めていく……」
「評価制度を見直したら、かえって社内がギスギスした……」

評価制度を導入すれば、社員がやる気を出し、会社が成長する。そう思っていないだろうか? しかし、間違った方法で評価制度を作ると、逆に 「社員のやる気を奪い、組織を弱体化させる」 という最悪の結果を招いてしまう。

例えば、「成果主義を導入したつもりが、社員同士が足を引っ張り合うようになった」 というケース。あるいは、「公平な評価を目指したはずが、評価の基準があいまいで、結局“上司の好き嫌い”で決まってしまう」 というケース。どれも、評価制度を誤って設計したことで生じる問題である。

評価制度は、「ただ作ればいい」 というものではない。経営理念に沿った正しい評価基準を作り、社員の納得感を得られる形で運用しなければ、期待していた成果は得られない。

本記事では、「社員のやる気を削がず、会社を成長させる評価制度の作り方」 を解説する。評価制度を作るなら、間違った設計を避け、正しい方法で導入しなければならない。失敗しない評価制度の作り方を知りたいなら、ぜひ最後まで読んでほしい。

1.経営理念を実現する人物像を決める

まず、評価制度を設計する前に 「自社が求める理想の社員像」 を明確にする必要がある。

(1)経営理念の整理
例:「地域社会に貢献し、誠実なサービスを提供する」

経営理念は会社の在り方、必要な人材の在り方を決める非常に重要な要素である。評価制度を作る前に、理念を整理すること。

理念というと難しく聞こえるかもしれないが、
・会社を立ち上げた理由
・事業を通じて貢献したい人や内容
・経営するうえでの大切にしたいこだわり

のようなものを中心に「まず書いてみる」と次第にクリアになっていく

(2)理念を実現するための人物像を設定
理念を体現するための人物像と具体的行動を設定する。これだけではわかりづらいと思うので、以下に例を出してみる。

例1)
理念: 地域社会に貢献
必要な人物像:地域の課題に関心を持ち、積極的に解決策を提案する
具体的な行動:地元イベントへの協力、地域のニーズを反映した商品開発

例2)
理念:誠実なサービス
必要な人物像:顧客第一の姿勢を貫き、クレーム対応も真摯に行う
具体的な行動:クレーム発生時に、顧客の視点に立った解決策を提示

例3)
理念:チームワークを重視
必要な人物像: 周囲と協力し、互いにサポートする
具体的な行動:部署間の連携を強化し、情報共有をスムーズに行う

このように、「理念 → 求める人物像 → 具体的な行動」の流れを作ることで、評価項目の方向性が定まる。

このステップを外すと…
・本来評価したくない社員が高評価になる
例)誠実な接客を重視する会社なのに、「売上が高い」という理由だけで押し売りをする社員が高評価になる。結果として、顧客離れが進む。

・社員が「どう努力すれば評価されるのか」わからなくなる
例)「頑張ったのに評価されない」と感じる社員が増え、不満が蓄積する。逆に、上司に気に入られることばかり考える社員が増える。

とせっかく作った評価制度が逆に組織崩壊を招くこともあるので、最初にしっかりと決めておきたい。

ステップ2:目的別に評価制度を設計する

評価制度の目的によって、評価基準や運用方法は大きく異なる。

以下に、目的ごとの評価制度の違いを具体例とともに示す。

(1)社員の成長を促進する評価制度(教育型評価)
▼特徴
・プロセス(行動)を重視
・振り返りとフィードバックを強化
・評価項目例

▼新しいスキル習得への意欲
・研修への参加回数
・先輩・後輩とのナレッジシェアの貢献度

▼運用方法
・定期的なフィードバック面談を実施
・評価結果をもとに、教育プログラムを提供

▼適用企業例
・若手社員が多い企業
・人材育成を重視する会社

(2)業績向上を目的とする評価制度(成果主義評価)
▼特徴
・数値で測れる成果を重視
・個人業績を給与
・賞与に直接反映

▼評価項目例
・売上目標の達成率
・コスト削減額
・新規顧客の獲得数

▼運用方法
・売上に応じたインセンティブ制度を導入
・目標達成の難易度を適正に設定

▼適用企業例
・営業職が多い企業
・成果を明確に評価したい会社


(3) 社員の定着率を向上させる評価制度(エンゲージメント型評価)
▼特徴
・組織への貢献や協調性を評価
・職場環境への満足度を考慮

▼評価項目例
・チーム内での協力姿勢
・部署間の情報共有の積極性
・会社のイベントやプロジェクトへの参加意欲

▼運用方法
・360度評価(上司・同僚・部下の意見を反映)
・社員満足度調査を年1回実施し、評価基準に組み込む

▼適用企業例
・離職率が高い企業
・社員のエンゲージメントを高めたい会社

このステップを外すと…
「成長を促すつもりが、社員の足を引っ張る制度になる」
例)個人の売上だけを評価基準にした結果、社員同士が情報を共有しなくなり、組織としての成長が止まる。

「公平な制度のつもりが、不満の温床になる」
例)評価の軸が不明確なため、上司によって評価基準がバラバラになり、社員から「結局、好き嫌いで決まっている」と不満が出る。

また、営業職は成果型、事務職はエンゲージ型など職種によって評価基準を変えるのも効果的。また、どれか一つを選択するのではなく、組み合わせて使うこともできる。

大切なのは、目的と職責にそった評価を行う、こと。

ステップ3:社員のヒアリングを実施する

会社の風土によって、何がモチベーションを上げるか、は変わってくる。

「評価しているのに、社員のやる気に火がつかない」とならないように、事前に社員の本音を引き出して、何があれば頑張れるのか?を理解することが重要だ。

このステップを外すと…
「評価基準が現場の仕事に合わず、社員が困惑する」
例)顧客満足を上げることにやりがいを感じる社員が多いのに、売上を上げることに偏ると社員のやる気がなくなる。

「評価の透明性がなくなり、不満が増える」
例)社員の意見を聞かずに評価制度を作ると、「何をどう評価されているのか」が伝わらず、不信感が高まる。

社員の意見を反映することで、納得感のある制度が作れ、評価基準への理解も深まる。

ただし、社員の意見に振り回されてはいけない。ステップ1で定めた「会社として目指してほしい人材像」はブラさずに、実現するためにはどんな手法が効果的か/どんな手法は逆効果か、を確認するためにヒアリングを行うこと。

ステップ4:評価制度の仕組みを決める

(1) 評価項目の決定
ヒアリング結果を基に、評価項目と評価基準を策定する。

評価基準はイメージしやすいように

○○が××できる状態
○○が××である状態

というように考えるとわかりやすくなる

【例】「リーダーシップ」評価基準

評価ランク  内容
★☆☆☆☆  指示待ちで行動しない
★★☆☆☆  自分の仕事はできるが、周囲を巻き込めない
★★★☆☆  チーム内での協力ができる
★★★★☆  部下を指導し、成長を支援する
★★★★★  経営視点を持ち、部門全体をリードする


(2)評価の頻度と方法
・年2回(半期ごと) の評価を実施
・目標管理(MBO)+ 行動評価 の組み合わせ

(3)フィードバックの実施
評価後には、必ず上司との1on1面談 を実施し、次の成長につなげる。

このステップを外すと…
「結局、評価が適当に決められる」
例)基準が曖昧なまま運用されると、「上司の主観」で評価が決まり、不満が爆発する。

「制度があるのに活用されない」
例)評価の頻度や方法が決まっていないため、忙しさを理由に評価が実施されず、放置される。

→ 評価のルールを決め、継続的に運用することで、制度が定着し、組織の成長につながる。

まとめ

評価制度設計の流れ
(1)経営理念から、求める人物像を決める
(2)目的を明確にし、それに合った評価制度を選択する
(3)社員のヒアリングを実施し、納得感のある評価基準を作る
(4)評価項目と評価基準を設定し、運用を決定する
(5)フィードバックを通じて、成長を促す仕組みを作る


経営理念を基盤とした評価制度は、単なる査定ではなく、組織文化を醸成し、社員の成長を促す強力なツールとなる。

社員の納得感を高めることで、モチベーション向上と業績アップにつなげていくことができる。

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